映画
□「別れる決心」(2023年2月公開)カンヌ映画祭監督賞受賞アカデミー賞国際長編部門韓国代表男が山頂から転落死した事件を追う刑事ヘジュンと、被害者の妻ソレ。取り調べが進む中で、お互いの視線は交差し、それぞれの胸に言葉にならない感情が湧き上がって…
25周年のスクリーン上映は福岡でも満員札止め。辛うじて最終日最前列を予約することができました。左隣は10代くらいの男子3人組。女子を誘えなかったんでしょうか。とても好感が持てます。映画が終わり場内が明るくなりました。「…エグいなこれ」「ぉん」「……
□「母の聖戦」(2023年1月公開) カンヌ国際映画祭「ある視点」部門:勇気賞東京国際映画祭:審査委員特別賞ベルギーを拠点にドキュメンタリーを撮ってきたテオドラ・アナ・ミハイ監督の劇映画デビュー。監督は、メキシコで娘を誘拐された女性を取材しドキュ…
□「あつい胸さわぎ」(2023年1月公開) 監督・まつむらしんご、脚本は「凶悪」「朝が来る」の高橋泉。オリジナルは2019年発表の同名舞台。昭子役の枝元萌氏は読売演劇大賞優秀女優賞。”若年性乳がん”をテーマとしているがいわゆる闘病ものではなく病気の人間…
□「そして僕は途方に暮れる」(2023年1月公開) 監督・脚本は「何者」「娼年」などの三浦大輔。劇団ポツドールの主宰。”演劇的なもの"を徹底的に排したリアリズムと、性欲などを直視した過激なテーマで2000年代から演劇界に揺さぶりをかけてきた。演劇に映画…
午前10時の映画祭にて再上映(町山智浩氏の解説あり)「ヘアー」 1979年 監督:ミロス・フォアマン「カッコーの巣の上で」や「アマデウス」のミロス・フォアマンは、チェコスロヴァキア出身でアメリカに移住した映画監督。本作は1968年上演のブロードウェイ…
□「とべない風船」(2023年1月公開) 監督・脚本は広島を拠点にCMディレクターなどを手がける宮川博至。「平成30年7月豪雨」をテーマにしたオール広島ロケの作品。地方発で大手資本が入っておらず独立系プロダクション製作での全国公開。出演は東出昌大、三…
□かつての若者たちの叙事詩1982年のローマ、16歳の4人の少年少女が出会います。彼らは自力で修理した赤い車に乗り込み、「自分たちを熱くさせてくれるものに乾杯」と歓喜します。そのなかで唯一の女の子ジェンマとパオロは恋に落ち、ジュリオとリカルドはお…
勤勉で謙虚な天才。彼の音楽が次々と紹介されていく。それは映画史そのもの。創った曲はいつもまず妻の意見を求める。知らない作品も少なくないのに鼓動が高鳴ってくる。悲しくもないのにメロディで泣きそうになる。荒野の用心棒、アンタッチャブル、ワンス…
「ママはレイプをつかまえているの?」権力者の性的暴行を暴こうとする女性記者ジョディ。彼女の幼い娘がそう聞いてくる。小さな子どもたちまでがそんな言葉を使っていることにジョディは慟哭する。自分の娘には虐待のある世界を”普通のこと”だと思ってほし…
孫までいる推定60代の男ふたりが「ボクたち結婚します」とカミングアウト。 白髪キザなおっちゃんは「トニ」ゴツい漁師のおっちゃんは「カルロ」 このふたりがジュテーム♥ それぞれの家族では「男かよ!」と大騒ぎ。 カルロの息子サンドロさん「ざけんな、オ…
20歳から49歳までの29年間、無実で服役した桜井昌司氏。 「冤罪で捕まって、よかった」 「刑務所ではつらつと楽しく過ごしました」 沈鬱な冤罪ノンフィクションを想像すると、突飛な彼の言葉にあ然とする。 言葉の力。 目の前の状況を正確に表すのが言葉だが…
お客さんはふたりでした。もうひとり女性のお客さんは居心地が悪かったかもしれないけれど、自分はとても助かりました。映画館に自分以外のお客さんがいることは大事です。 例えば…『他のお客さんがいるから、鼻毛とか抜かないでちゃんと観よう。』とか、『…
「非常宣言」 航空機パニックムービーとして一級品だが、その凶器が感染ウィルスということで、"自分の映画"だと今を生きる観客を引き寄せしまう剛腕ぶり。犯人の素性や動機を知りたいという観客の気持ちはあっけなく砕かれ、そのあたりも非常に今日的だ。事…
1993年にアカデミー脚本賞を受賞したサスペンスドラマの劇場再上映。主人公のファーガスはIRA兵士で、人質として拉致したイギリス兵ジョディの見張り役を務める。敵対する立場ながらふたりは会話を重ね、奇妙な関係が成立していく。主導権は拉致されているイ…
いま新しい表現の誕生に立ち会っているという喜びと戸惑いがある。「かぐや姫の物語」を観たときの衝撃がよみがえる。それは新しい表現とともに、作品に強烈な”痛切さ”が流れているからだ。どうしても描かなければいけない”痛切さ”があり、そのためには何と…
歌声が注目されて、彼女が笑う。眩いライトを浴びて、彼女が笑う。スーパーボールで歌い、彼女が笑う。彼女の最期を知っているだけに、全ては終局へのカウントダウンのようで胸が痛い。一段ずつ駆けあがるスターへの階段が、「十三階段」のように感じる。 高…
7人の香港映画監督によるオムニバス。1950年代から未来にかけてまでの香港を監督たちが分担して描いていく。歴史を振り返ると香港も実に数奇なところだ。 1842年 アヘン戦争後、イギリス領となる 1941年 第二次大戦下、日本領となる 1945年 終戦後、イギリス…
2004年~2020年ライブからの15曲。MCなしの90分。すべては歌にあると言わんばかりの説得力。彼女は絶望と希望に憑依され、祈りを歌う巫女のようだった。『命につく名前を心と呼ぶ 名もなきキミにも名もなきボクにも』唸るように伸びゆく歌声が映画館に轟く。…
上映中、一方では演出が好みではないと閉口し、もう一方ではこの題材に取り組んだ製作陣に敬意を抱いた。そんな両方の意味で「なんだこの映画」と思いながら、閉口と敬意の均衡でスクリーンに強く集中していた。松坂桃李の「私はまた卑怯に戻ったのです」と…
中学生たちが生きる世界は過酷だ。「だから逃げてもいいし、こんな世界とまともに向き合わなくてもいい。」そう言うのは簡単だが、それができないから苦しんでいる。自分を思い出す。どうして自分は中学から逃げられなかったんだろう。そして、実際に中学に…
こんな「はい」を聞いたことがない。「つぎのしあい、たのしみだね」と会長の妻(仙道敦子)に言われたとき。耳の聞こえない彼女は頷くだけでいいのに、声に出して「はい」と言った。ケイコの厚ぼったい背中と、自分で塗った蒼いマニュキア。世界でいちばん…
誰かの味方のような映画だった。三浦透子が演じる佳純は恋愛感情や性的欲求がない30歳の女性。周囲が恋愛や結婚を急かしてくることへの違和感をひとり抱えて生きている。つき合いの合コンは居心地が悪く、家では妹が出産を控えており、母にはもっと明るい服…
「ロミオとジュリエット」を観ると狂おしくなる。劇場を出るとき”オレも死にたい”という興奮に駆られるのは、この物語の疾走感のせいだ。若きふたりは出会って4日目に死す。でもそれが短いとは思えないし、かわいそうなんてもっと思えない。出会って翌日に結…
この人のように生きたいと心から思った。思うどころかそれは祈りに近かった。山野井泰史(やまのいやすし)は、登山における世界最高賞に選ばれるクライマー。少年時代から山に憑りつかれ、ひとり世界中の絶壁にへばりつく。50代の泰史は実にあどけなく、「…
妊娠したことを女性だけが抱える映画がある。それが現実だからだ。 母にも言えず、膨らむ腹をひとり見つめる。ひとり黙って苦しむ横顔。 「17歳の瞳に映る世界」「朝が来る」「わたし達はおとな」「ベイビー・ブローカー」…… その時みんな女はひとり。 あと…
鑑賞後に、廣木隆一監督のこれまでのインタビューとかを出来るだけ読んだ。 やっぱりそうだ。 たとえば恋愛映画のリアルについて監督が語っているコメント。ー--------------------------------------カップルの数だ…
まさか中国でデモが起きた。果敢な彼らにどうやって心を寄せたらいいかわからない。自分がデモに加わるわけにも行くまい。しかし心が落ち着かない。だから中国映画に行くことにした。そしたらいつも何かに怒っているショートカットにますます落ち着かなかっ…
冒頭、マグリットの「複製禁止」という絵画からはじまる。絵の中の男はこちらに背を向ける格好で鏡の前に立っているのだが、鏡に映っているのは自分の後ろ姿という奇妙な絵画だ。鑑賞者は2つの後ろ姿を見せられることになる。さらに画面には、その絵画を見…
この映画で描かれている階級闘争も、同調圧力も、生の虚無も、自己実現も、すべてが”ショット”で描かれているということに心臓が鼓動した。本作の公開は2012年、「公開10周年記念上映」で劇場にかけられた。11月25日から1週間の限定公開。朝井リョウ原作、吉…