映画館に帰ります。

暗がりで身を沈めてスクリーンを見つめること。何かを考えたり、何も考えなかったり、何かを思い出したり、途中でトイレに行ったり。現実を生きるために映画館はいつもミカタでいてくれます。作品内容の一部にふれることもあります。みなさんの映画を観たご感想も楽しみにしております。

2022-12-29から1日間の記事一覧

映画「ラーゲリより愛を込めて」 脳内で違うストーリーに書き換えた

上映中、一方では演出が好みではないと閉口し、もう一方ではこの題材に取り組んだ製作陣に敬意を抱いた。そんな両方の意味で「なんだこの映画」と思いながら、閉口と敬意の均衡でスクリーンに強く集中していた。松坂桃李の「私はまた卑怯に戻ったのです」と…

ノンフィクション「東電OL事件 DNAが暴いた闇」(読売新聞社会部) ワールドカップより国民を意識するとき

2012年に読売新聞社会部が、東京電力女性社員殺人事件の有罪確定から無罪に覆った経緯を振り返ったノンフィクション。 1997年 東京電力女性社員殺害事件 2000年 第一審で被告に無罪判決 同年 逆転有罪判決で無期懲役 2011年 弁護側の要請で新たなDNA鑑定 201…

新書「ベルサイユのばらで読み解くフランス革命」(池田理代子) 革命は美しく散れない

フランス革命には、人間というものの現状変革の可能性と殺戮のおぞましさがある。安保闘争、香港デモ、天安門、ヒジャブ追悼デモ…圧倒的に非力に思える抗議活動であってもフランス革命のことを思う。フランス革命はどういう要素が重なって現状変革が実現した…

新書「異論正論」(石破茂) 本は政治家が透けてくる

政治家の考えを新書1冊の分量で拝聴するのは有意義であった。支持しているか否かに関わらずだ。代議士、つまりわれわれの議会を担っている人の考えを知って損はない。選挙演説やテレビの討論は、じっくり持論を展開できないから、本の方がいい。こうして文章…