映画館に帰ります。

暗がりで身を沈めてスクリーンを見つめること。何かを考えたり、何も考えなかったり、何かを思い出したり、途中でトイレに行ったり。現実を生きるために映画館はいつもミカタでいてくれます。作品内容の一部にふれることもあります。みなさんの映画を観たご感想も楽しみにしております。

2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

映画「ロストケア」 苛立ちはどこから

□答えを出すべきでない問いがある戸田菜穂が演じた親の介護に疲れ切った娘。彼女が傍聴席から松山ケンイチに「人殺し、人殺し」と絶叫したときの獣のような咆哮。介護で限界になっていたが、それでも親が殺され猛り狂った。親の介護を続けていたら、戸田菜穂…

映画「ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー」 魂の救済

□最も劣った人間だと思った日 楽しいのです。これだから映画は楽しいのです。 上映中、終始ケタケタと脱力して笑っていることが幸せでした。 「え、もう終わり?」と本気のバカ面してた自分が可笑しかったです。 魂を救済してくれた映画ってなんですか? 『…

映画『ベイビー・ブローカー』 水の存在

□第1回福岡コ・クリエイティブ映画祭a.NAKASU⁡⁡3月19日に福岡で開かれた映画祭で是枝裕和監督を迎えてのオープニング上映。⁡⁡□観覧車のシーン⁡⁡2022年の封切り以来の鑑賞であったが、やはり観覧車のシーンの美しさは息を止めて見入ってしまう。⁡⁡⁡それはマジ…

映画「オットーという男」 親切さや寛容さがあるのも事実

□死ねなくなってしまったトム・ハンクス演じるオットーが世を儚んだのは、妻を亡くしたからか。たぶんそうなんだけれど、それだと妻や愛を持たない自分はさっぱり理解ができない。だからオットーが死にたいのは「世界は生きるに値しないと呆れたから」という…

映画「少女は卒業しない」 あなたのおかげなんだよ

□瞳の黒に潤んだ絶望茶色いモザイク模様の床にイスが引きずられる音がすると、一瞬にして高校生の自分に引き戻されてしまう。否応なしに世界のすべてだった息苦しくて甘やかな学校。.3日連続で映画館に通い3回鑑賞した。高校生たちの物語だというのに、自…

映画「Winny」 開発は自分の表現なんです

□『Winny』(2023年3月公開)監督・脚本 松本優作出演 東出昌大 三浦貴大これは興味深い。「ナイフをつくった者は罪なのか」使う側の倫理ではなく、開発者の性を罰する国家。開発意欲のない国にしないために闘った人たち。このテーマをじっくり考えた経験は…

映画「ひとりぼっちじゃない」アナ・デ・アリマス

□つまらない私ある作品を「つまらなかった」と言い捨てるのはカンタンです。しかし「おもしろかった」という方もきっといらっしゃるわけです。だからつまらないのは作品ではなく、私という人間ではないかという疑念が生じます。馬場ふみかと河合優実と井口理…

映画「フェイブルマンズ」 映画と契約した男

□母の業サミー少年すなわちスピルバーグ少年は、家族のキャンプを撮影をした。その素材を編集して映画をつくる。監督というのは、ひとつの素材から複数の作品をつくることもできる。このときの1本は「大好きなママ」。もう1本は「恋するママ」。世界的監督…

映画「イチケイのカラス」 そんなの映画じゃねえ

□私は疲れていたんです私は罪悪感いっぱいで劇場に向かった。先日初対面の人に映画が好きですと伝えたところ「私も好きです、昨日も行きました」と返ってきた。なんてステキな出会いだと思い、何を観たか尋ねた。「『イチケイのカラス』です」…それ映画じゃ…

映画「劇場版センキョナンデス」 タミガシュナンデス

□『劇場版センキョナンデス』(2023年2月より順次公開)別の映画を観に行った時、ロビーに人が溢れていて、隣のスクリーンに補助席用のパイプイスが運ばれていった。この活気は本作の舞台挨拶のせいだった。プチ鹿島氏は新聞14紙を読み比べる時事芸人で弁舌…

映画「茶飲友達」 家族と孤独という妄執

□『茶飲友達』(2023年2月より順次公開)渋谷ユーロスペース1館ではじまった本作は、50以上の劇場公開へと拡大している。福岡出身の外山文治監督の舞台挨拶があった地元上映は満席。小説家になりたかったことや、天神のレンタルビデオでバイトしていたエピソ…

映画「『生きる』大川小学校津波裁判を闘った人たち」 生き残った者の生き方

□大川小の3.11 わが子が見つかったとき、その体は砂にまみれていた。目をなめて砂をぬぐい、鼻の砂も吸って取り除いた。砂まみれの体をなんとかしてやることしかもう親にできることはなかった。石巻市立大川小学校の生徒は約1分でたどり着く校舎裏の山へ避難…

映画「逆転のトライアングル」 皮肉に見せかけた現実

□『逆転のトライアングル』(2023年2月公開)この強烈なパルムドール受賞作は3部構成。メインキャストは男性モデルのカール。彼には”TRIANGLE OF SADNESS”(眉間の皺)がある。男性モデルの賃金は女性の三分の一で、外見以外には興味を持たれず、性的搾取の…

映画「ベネデッタ」 すっぽんぽんだ

□神を信じない深い信仰彼らは何を信じていたんだろう。キリストを見た聖女ベネデッタベネデッタと体を重ねる修道女神の沙汰も金次第の修道院長娼婦をよく知る教皇大使少なくともはっきりしていることは、彼らはみな神様だけは信じていなかったということだ。…

映画「世界は僕らに気づかない/Angry son」映画館で居心地悪いがなくなる日

□世界は僕らに気づかない/Angry Son(2023年1月より順次公開)大阪アジアン映画祭で"来るべき才能賞"を受賞。フィリピン人の母親レイナと暮らしている高校生・純悟(じゅんご)の日々を描く。フィリピン国籍、母子家庭、同性愛...そんな言葉からはタイトな結…