映画館に帰ります。

暗がりで身を沈めてスクリーンを見つめること。何かを考えたり、何も考えなかったり、何かを思い出したり、途中でトイレに行ったり。現実を生きるために映画館はいつもミカタでいてくれます。作品内容の一部にふれることもあります。みなさんの映画を観たご感想も楽しみにしております。

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

映画「同じ下着を着るふたりの女」 愛を嗤う母

□卓越した人間観髪を赤く染め娘に手をあげる母それを毒親としてしまえばわかりやすいかもしれないおそらくキム・セイン監督の分身的な存在は娘の方であったに違いないしかし監督はこの母娘の善悪について絶妙な均衡で描き続けただから観客は母娘どちらの気持…

映画「逃げきれた夢」 主演俳優は光を冠しているのに

□光石研と間と「光石さんと間で出来ている」フォローさせていだいているkalindaさんが評したこの言葉に優るものはない長年の学校勤めを辞めようとしている男彼には心の底から語れる”何か”がなかった妻との関係は空虚なものとなっている娘に話しかけてみても…

映画「アフターサン」 私たちがソフィのために泣く

□どうして没入しているのだろうどこかの家族の旅行ビデオそんなものを他人が観ていられるはずがないこの映画はひなびたリゾートホテルでの父と娘のひと夏を映し続ける極めてパーソナルな映像だそれなのに私はどうして没入しているのだろう少し緊張さえしてず…

映画「ウーマン・トーキング」 南十字星に拳を突きあげて

□2023年の重要な1本2023年のとても重要な1本だと感じるこの作品のテーマは女性の尊厳についてだしかし本作は他にも重要なテーマと向き合う機会を与えてくれた紛争のときにとるべき態度について洗脳や教育がもたらすものについて次世代のために今を生きること…

映画「ハマのドン」 ただもの言うことが難しい国

□自分を大切にしすぎている権力や組織に抗えるわけがないそう思って生きているしかし「ハマのドン」は最高権力に異議申し立てをした社会的に抹殺されるかもしれない本当に殺されるかもしれない惨めな人生になるのは必至だろうでもそうだったとしてもドンに後…

映画「マルサの女」 俗が黄昏のなかで美へ反転する

□午前10時の映画祭13『マルサの女』(1987年公開)『マルサの女』ときたらこの音楽ですよねトゥートゥトゥトゥートゥトゥトゥートゥ♪トゥトゥトゥトゥートゥトゥトゥール♫久しぶりに鑑賞したんですがこのメインテーマ本編中で何十回とかかるんですねそしても…

映画「波紋」 狂うか狂ったふりでもしなければ

□荒ぶる潜在エナジーこれぞいろんな人の感想を聞いてみたいと思わせる映画でした観客をそれぞれの思考に導くような豊かさがありましたね序盤からこの作品の求心力はすごいストーリーは筒井真理子を軸とした単線なのに彼女に対する理解と不可解でグイグイ引き…