映画「桐島、部活やめるってよ」(10周年記念公開) より美しくより残酷に
この映画で描かれている階級闘争も、同調圧力も、生の虚無も、自己実現も、すべてが”ショット”で描かれているということに心臓が鼓動した。
本作の公開は2012年、「公開10周年記念上映」で劇場にかけられた。11月25日から1週間の限定公開。
朝井リョウ原作、吉田大八監督で映画ファンが愛する1本であり、当時の出演者たちは映画界を担う逸材になっている。神木隆之介、橋本愛、東出昌大、清水くるみ、山本美月、松岡茉優、前野朋哉、鈴木伸之、太賀、大後寿々花など。
劇場では初めてだが、何度も自宅鑑賞しており、ストーリーもセリフも把握している。
「おまた♪」とか、「わたしも女子だけど」とか、「だから結局できる奴は何でもできるし~」とか。
それなのに終始心臓の鼓動を感じるほど、この作品に緊張しっぱなしだった。
「映画は”ショット”だ」
この当たり前のことをファーストショットから突きつけられた。ストーリーもセリフも主題も最高にいい。それはわかっていたが、家のモニターでは”ショット”の凄みがちっともわかっていなかったのだ。
"ショット"が語ること、そのことの美しさに興奮した。恍惚と言ってもいい。
映画はセリフでもストーリーでもない。”ショット”に何を閉じ込めるかだ。
神木隆之介をどの角度で、どの大きさで、どんな色で、どんな長さで、どんなセリフで、どんなキャメラの動きでもって切り取るか。
そうして出来たひとつのショットには意味が生じる。それをさらに次のショットへ繋いでいくことで観客の心は徐々に切なくなり、やがて悲しくなり、とうとう慟哭する。
画を映すんだ。”ショット”で感情も関係も描くんだ。
”ショット”に恋してときめいた。緊張して、興奮して、終映したときは心が失禁気味だった。
何度も観ているこの作品を初めて映画として観ることができた。この作品の美しさと残酷さがよりギラリと際立ったのは、ここが映画館だからだ。
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