映画館に帰ります。

暗がりで身を沈めてスクリーンを見つめること。何かを考えたり、何も考えなかったり、何かを思い出したり、途中でトイレに行ったり。現実を生きるために映画館はいつもミカタでいてくれます。作品内容の一部にふれることもあります。みなさんの映画を観たご感想も楽しみにしております。

映画「みんなのヴァカンス」 AIも称賛、特に夏の妖精を


□『みんなのヴァカンス』

脚本・監督 ギヨーム・ブラック

日本では2022年8月公開。
キノシネマ天神にてリクエスト特集で再上映。

昨年公開なのでレビューは出揃っている。
これがすごい。

「最高」「共感」「すごく笑った」「多幸感」 
「テンポ編集」「風景美」「ずっとみていたい」 「ギヨーム・ブラック大好き」

否定的な言及はひとつもなかった。

「フランスの田舎は蛾が多いな~」はあった。
これにしても映画の美しさを讃え満点評価。  

確かに夜のキャンプ場の場面でやたら蛾が飛んでいた。

ああ、またやってしまった。


□ただのド不倫映画じゃ...

印象に残ったのは主人公フェリックスの傲慢さだ。  

車に相乗りさせてもらうときの横柄さ。
車中でスナックを食い散らかすひどい態度。
運転へタだ、子猫ちゃんだ、慮らない言いぐさ。
車の破損にも同情心のない冷たさ。
テントをさらっと独り占めする利己的な性格。 

彼は他人が嫌な思いをしても平気なんだろうか。
彼は他人にどう思われようが平気なんだろうか。

それからフェリックスの親友であるシェリフ。
彼にも唖然。

子ども連れのエレナに彼は確かに優しかった。
いや、あれは優しさだろうか。
夫不在のエレナの間隙につけ込んだのではないか。

「このまま帰った方がいい?」
なんて言って彼女に罪をシェアさせた。
子どものそばでド不倫。
相手の心に傷を残しはしないかと
せめて頭をよぎるくらいはしたのだろうか。


□『ほぼみんなのヴァカンス』

これはコメディーだ。
わざと人の愚かさを描いているんだ。
そして人の愛おしさを伝えている...んだ。
んだから楽しく見るのが正解なのだ。

映画の感想はつまりその人の世界観。

自分がこの映画で抱いた嫌悪のようなものは、自分に欠落しているものであり、喉から手が出るほどほしいものなのだ。

率直さ
相手の顔色を盗み見たりしない対話
自ら欲望に従順になれること
先のリスクなど厭わず行動できること

あれは安室ちゃんだったか、YUKIだったか。
LIVE会場の観衆は総立ちだった。

それなのにただひとり着席していた。 

手拍子がうまく合わないし
体を揺らすとなんか自意識がさめざめする。
無理に立っていると
自分を偽っているようで気持ち悪い。

だから座ってしまった。
でも落ち着かなかった。
人と人の隙間から豆粒サイズの歌う彼女を見てた。
いや正確にはオレはオレを見ていた。
なんでオレだけこうなんだろうとオレを見ていた。

ダメだ、機械までも称賛してる。
AIチャットくらい味方になってくれると縋ったが。
「夏の妖精」⁉

ああ、やってしまった。

人は無理だ。
蛾になりたい。


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