映画館に帰ります。

暗がりで身を沈めてスクリーンを見つめること。何かを考えたり、何も考えなかったり、何かを思い出したり、途中でトイレに行ったり。現実を生きるために映画館はいつもミカタでいてくれます。作品内容の一部にふれることもあります。みなさんの映画を観たご感想も楽しみにしております。

2022-08-23から1日間の記事一覧

映画「サバカン」 ここでお別れしたくない、またねって言いたい映画

主人公少年を助ける由香(茅島みずき)というおねえさんが登場する。脇を固めるひとりで出番は多くなく、素性の説明もない。彼女が海辺で、朝鮮半島から流れてきたであろうサイダー缶を拾いあげ、韓国に行ったことはないと小さく呟く。そして海の向こうをキ…

小説「慟哭 小説・林郁夫裁判」 そして映画「すばらしき世界」

オウム事件を追った「慟哭 小説・林郁夫裁判」を読みながら、こういう事件はきっとまた起こるだろうと確信に近い感覚に襲われた。それは自分自身がある部分でこの事件を起こした人たちを「わかる」と思うからであり、この事件を起こした人たちがちっとも異常…

映画「アトランティス」 戦争には体温がない

戦争とは何か。外交手段のひとつ課題解決のための止む無き手段有史以来繰り返されてきた人間の本能祖国ウクライナを守るための戦争。そのあとに残ったものは、溶鉱炉に身を投げる元兵士、地雷で荒廃した大地、無数の死体袋。この作品は長回しで撮られ、硬質…

映画「恋恋風塵」 「ない」というドラマが唸りをあげて起きている

クラスや会社に必ずいる。地味で無口ではあるが、賢くて誠実な人物。余計なことはペラペラしゃべらないし、調子にのって踊らないし、オレがオレがとわめかない。しかし本質を生きているような人物。もちろん一目置かれる。長くみんなの記憶にも残る。「恋恋…