映画館に帰ります。

暗がりで身を沈めてスクリーンを見つめること。何かを考えたり、何も考えなかったり、何かを思い出したり、途中でトイレに行ったり。現実を生きるために映画館はいつもミカタでいてくれます。作品内容の一部にふれることもあります。みなさんの映画を観たご感想も楽しみにしております。

映画「妖怪の孫」 ガンガン刺激される

□『妖怪の孫』って...

安倍晋三氏の本質に迫ろうとする取材。

米国人記者や右翼の一水会の見解も盛り込まれ、好奇心をガンガン刺激された。

青木理の著書『安倍三代』も読んでいたが、こちらと同様に歴代最長総理の考察としてすぐれた内容。

予告で『妖怪の孫』と聞いたときは、なんでいたずらに保守層から反発されるタイトルにするんだろうと思った。

実際Yahoo!のレビューでは、まだ公開してないのに反感の「低評価」がつけられていて笑ってしまった。

ただ監督が、安倍氏アイデンティティが「昭和の妖怪」岸信介の影響下にあると強調したいことは鑑賞してよく理解できた。

だからこそのタイトル。

ならば『岸信介の孫』とか『岸を目指した宰相』とか『隔世の夢』とかじゃダメだったのか。

まあタイトルとしてはパンチに欠けますね。

どんなタイトルにしても保守層は観に来ませんよ、なんてさびしいこというのはやめましょう(笑)

□今そこにある岸信介

安倍氏の意識には父方の祖父「安倍寛」ではなく、母方の祖父「岸信介」があり、それが行動原理になっているという考察は以前から承知していた。

安倍寛は戦前に「反骨の政治家」と言われた人)

それに加えて今回は憲法学者小林節氏の主張に惹きつけられた。

安倍氏含めて自民党の「改憲の本質」についての見立てだ。

小林氏は憲法会議で何度も自民党と接してきたが、彼らは憲法は「権力を制限する」ためのものという普遍的な定義を理解したがらないそうだ。

憲法は明確にほかの法律と性質が異なる。

国民が政府に無制限に権力を与えないことで自らを守るものだ。

つまり国民から政府に課しているルール。

しかし自民党改憲草案は「国民は憲法を遵守すること」と謳われており、政府の役割は「憲法が守られることを擁護する」と位置づけている。

その考えのおおもとは、自主憲法推進の長だった岸信介から受け継がれてきていると言う。

岸は東条内閣の閣僚であり、長州藩の家系である。

岸の影響は大きく、「欽定憲法」だった戦前政府のように強力な指導力で国家運営していくことが自民党の理想にあると小林氏は指摘する。

強い政府 富国強兵 国体護持
薩長政府の夢よもう一度、といったところか。

そう考えると一連の安倍氏自民党の姿勢に合点がいく。


□監督の切実さと行動

この映画、締めのナレーションが流れるところで映像が唐突にストップした。

「監督の内山です、このまま映画を終えていいのかと思ってしまいました」

そう言って監督がはじめて声を出し、娘さんの写真を出した。

自分は娘の将来のために国の行く末を本気で案じていると穏やかに切実に話しはじめた。

子どもたちの時代に戦争が起きてほしくない。
あらゆる戦争は「国を守る」と言ってはじまると。

政治的な発言や見解を表明するのは勇気がいる。

私たちの国は「気づかいの合意形成」でなりたっているから、冷静な批判や意見交換の鍛錬がなされていない。 

だから自分と意見を異にすると「攻撃」しかできない悲しい傾向にある。

意見ではなく人格を否定してしまったりもする。

私は監督の切実さと行動に打たれた。

これからも監督の作品を観たい。
そして内容を拝見したうえで支持したい。

憂国」でも「愛国」でも、保守でも革新でも、誰でも基本的にはいい国にしたいと考えていると信じたい。

そんな考えは甘いとくじけるようなことがあるだろうが、まぁ図太くテキトーに復活したい。

今日も選挙カーがうるさい。
本当に覚悟がある方は誰ですか。
その方に入れたい。


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