映画館に帰ります。

暗がりで身を沈めてスクリーンを見つめること。何かを考えたり、何も考えなかったり、何かを思い出したり、途中でトイレに行ったり。現実を生きるために映画館はいつもミカタでいてくれます。作品内容の一部にふれることもあります。みなさんの映画を観たご感想も楽しみにしております。

映画「Single8」 こうして映画監督になる


□『Single8』

平成ウルトラマンシリーズを手掛ける小中和哉監督の自伝的作品。

スターウォーズ』に魅せられた1978年の夏。
文化祭の出し物である8ミリ映画作り。

ヒロインはクラスの女の子。

映画製作は彼女に思いを伝えるためでもあった。
でも残ったのは映画の方で、後年彼は監督になる。

***

「ああ、懐かしい。撮ってるときは何が写っているのかさっぱりわからないのが8㎜自主映画だった。だから、出来上がった作品はいつも予想もしないものになる。あれがスタートだった。」

この黒沢清監督の推薦コメントに心をつかまれ劇場に足を運んだ。

福岡では1週間で上映は終わってしまったが、最終上映回では映画に恋した観客たちが駆けつけていた。

もちろん無言で帰っていってたけど、みんなホカホカした足取りだった気がする。

□粒子は粗いのにみずみずしい

フジカラーのシングル8を片手に思考錯誤して映画を撮り進めていく。

映画が好きな観客としては”こうやって映画はつくられる”と教えられて楽しい。

ボールの反射を利用して「広角」を代用したり、逆再生を利用して時間戻しの表現をしたり、みんなで電車に乗って撮影地まで行ったり、現像したフィルムを切ったり貼ったりぶら下げたり。

そしてなんとこの映画は、劇中で撮られた8ミリ映画『タイム・リバース』をまるまるノーカットで観ることができるのだ。

自分も文化祭に参加しているような気分で手書きの「THE・END」が出たときは拍手したかった。

映画をつくっている彼らの姿が揺らめいたり、表情がグーっとズームになったりする。

この映画自体もまるで8ミリ映画みたいだ。

撮影帰りの電車、疲れて寝てしまった彼女。
肩にもたれてきたのが一番近づけた瞬間だった。

粒子は粗いのにたまらなくみずみずしい。


□高校生から変わらないもの

驚いたことにエンドロールで、劇中で取り扱った数々の映像作品の”原型”が紹介される。

変てこなクマの映画も、フィルムに直接書き込んだアニメも、この文化祭作品もすべて実在していた。

この映画は自伝的作品ではなくて実話だった。

ひとりの映画好きが”こうして映画監督になる”と教えてもらった。

『フェイブルマンズ』ならぬ『ウルトラマンズ』。

小中監督が高校生のときから一貫して変わらなかったのは「次回作はもっと傑作にするから」という思いだった。

※ベイビーわるきゅーれがヒロインです😆




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