映画「少女は卒業しない」あなたのおかげなんだよ

□瞳の黒に潤んだ絶望

茶色いモザイク模様の床にイスが引きずられる音がすると、一瞬にして高校生の自分に引き戻されてしまう。

否応なしに世界のすべてだった息苦しくて甘やかな学校。

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３日連続で映画館に通い３回鑑賞した。

高校生たちの物語だというのに、自分のむせび泣くような何かを押してくる。

人はどうしてこんなにも美しくて
別れはどうしてこんなにも凛々しくて
桜はどうしてこんなにも悲しいのだろう。

そう思わせる映画だ。
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河合優実の初主演。

彼女は瞳の黒に潤んだ絶望をたたえている。

何をしていても痛みと苦しみを抱えているような印象で彼女から目が離せない。

キャメラが彼女を背後からとらえる。

窓からの日差しが逆光となって、彼女の背中は真っ黒なシルエットとなる。

キャメラが近づき、彼女の背中でスクリーンはいっぱいになる。

死の世界に誘われているような、そしてそれを拒んでいないような彼女の黒い影。

そのままいつまでもショットは切り替わらない。

□他の誰かの胸を打っている

卒業式を明日に控えた予行練習で山城まなみ（河合優実）が答辞を務めることが知れる。

そのとき何人かの者が静かに瞠目する。

卒業生の中でも特につらい思いをしたまなみ。

周囲はそんな彼女が前に進もうとしていることに驚き、ひそかに内省する。

口に出したり、連帯するわけではない。

でもひとりの人間の真剣さが、他の誰かの胸を確かに打っている。

一歩踏み出す決意が、ろくに話したこともないクラスメイトへさざ波のように打ち寄せる。

作田は残り２日の高校生のうちに自分を変える行動を課し、後藤は大切な人に精一杯笑って別れを告げに行き、神田は私だけの秘密をみんなに打ち明ける決断をする。

□私が死んでしまっても帰ってきて

人間はなんて美しいのだろう。

別れの痛みと苦しみを知っていながら、それでもなおそこに踏み出す人間の凛々しさに、どうしてこんなに泣けて泣けてしょうがないのだろう。
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まなみの最愛の人が口ずさんでいたあの歌は、他の誰かの最愛の人が歌ったもので、彼のもとに風が運んでいた。

まなみは彼にそのことを教えてあげたかったと涙した。
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私たちは誰かの美しい歌声を聞いて歩きだす。
顔をあげて荒野を歩きだす。

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帰ってきて　草原の夏でも　雪の冬でも
帰ってきて　もし私が死んでしまっても
帰ってきて　私のダニー　
帰ってきて　心から愛しています

あなたのおかげで前に進んだ人がたくさんいるんだよ。