映画館に帰ります。

暗がりで身を沈めてスクリーンを見つめること。何かを考えたり、何も考えなかったり、何かを思い出したり、途中でトイレに行ったり。現実を生きるために映画館はいつもミカタでいてくれます。作品内容の一部にふれることもあります。みなさんの映画を観たご感想も楽しみにしております。

映画「RRR」 インドの覇権を確信する


「インド、やるじゃん!」は「インドくん、すごいなぁ♪」になり、やがて「イ、インドさん、なんかボクにできることある…」から「え、日本だよ、日本、知らないって、またまたぁ(涙)」と声が震えてくる。

インド映画「RRR」

ダンスとアクションのわんこそば、神と自然への畏怖、さすがインドの大群衆シーン、神話や説話を思わせる骨太なストーリーテリング

堂々たる完全無欠の映画がここに見参である。筋肉モリモリ、髪の毛クログロ、笑顔ギラギラ。少し離れて!

「インド映画はすごい」というオレの言葉のなかに、それでもどこかでインドは途上国なのにといういやらしさがあったのだと思う。インダス文明とゼロとカレーのインドを見下すことがそもそも愚かなのだ。しかし人間というのは認めたくないのだ。あなたの方がすごいですよねということを。相対的に自分が下に下に墜落するのが立っていられないほど恐ろしいのだ。

映画終盤で憂鬱な気分を含みながらオレはつぶやく。

「次の覇権は間違いなくインドだ」

映画のことではない。

映画もそうだが、世界の覇権を握るのはインドだというイメージだ。根拠はこの映画だ。エンドロールでキャスト達が笑顔800兆%で踊る姿を見ているとそう確信する。ドングリ眼のちょび髭がご機嫌にダンシング。オメーら一体いつまでやってんだ、もう3時間超えてんぞ!

彼らの”細かいこと気にしない”という無神経さは、きっとこいつらはアメリカや中国をごぼう抜きにするという予感を揺るぎないものにさせる。

あまりのおもしろさにニコニコでこの映画を観ていたはずなのに、いつの間にか顔面麻痺してきた。

まるでスクールカーストのような思いにとらわれる。スポーツ万能でイケメンのインドくんが自己肯定感たっぷりで教室の中心に鎮座しており、アメリカくんや中国くんがその周りで「マジかよー」「ウケル」「ヤベー」とか言って盛り上がっている。ボク日本は誰とも目を合わせないように教室の隅で文庫本を読んでいるが、「人間失格」の内容は頭に入ってこない。インドくんが無意識に発している”マッチョさ”に耐えきれず消えてしまいたい。小学校のころはそこそこ人気者だったのにと世界を呪う。インドくんが女子をからかっている。女子たちは「ヤダー」と黄色い声をあげている。スカートの短いスイスちゃんまでインドくんに媚びている。ボクの足元にボールが転がってくる。「あいつ誰だっけ?」。ボクはギクリとする。「何言ってんだよ、日本だよ、日本」「あ、そっか。おい日本、ボールこっちに!」。ボクは身動きがとれない。「なにしてんだよ」「ボール投げてくれよ」「なにあれシカト♡」。自意識と劣等感が股間から液体となって溢れだす。ああああぁぁぁぁぁ。ボールを握りしめ、スイスちゃんの顔面めがけて至近距離から「このバイターーーーー」と投げつける。ボクは涙と鼻水とその他の液体でビショビショになりながらスイスちゃんに馬乗りになって「タイトルがアールアールアールって、タイトルがアールアールアールって、おかしいだろ、おかしいだろって言ってんだよぉぉ」と永世中立国である彼女の耳たぶにしゃぶりつき…

あ、映画がようやく終わったようです。3時間7分があっと言う間でした。というレビューをよく見かけます。バカ言え3時間超だぞ、いくら何でも”あっ”ってことはねえだろ、時間感覚どうかしてるぞ。はい、とても楽しかったです💃🕺💃

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