映画「裸足で鳴らしてみせろ」 恥ずべき映画の私
PFFでグランプリを獲った気鋭監督の青春映画である。
恥ずかしい。
きっと私は苦り切った顔でスクリーンを観ていたことだろう。
青春映画。
バイクふたり乗り、ぶつかり合う裸、レコードとカセットテープ、ここではないどこかへ、赤いブラジャー、親との確執、喧嘩と友と愛情と、夜のプール、何者でもないが何者にでもなれる俺たち。
おえー--ー。
青春トッピング全部乗せ!
リバース、リバース、リバース。
こんな青臭い映画、恥ずかしくて観てられないよ。
いや、ちがう。
本当に恥ずべきは私なのである。
主人公たちが海外のどこぞへ「きっと行こう」と真剣に誓い合ってるとき、私は『海外ロケの予算ないだろうからチミたちそれはないよ』と歴史教科書のお札に火つけてる船成金みたいな顔でつぶやいたのである。
恥ずかしい!
破廉恥、オヤジ、薄汚れ、夢も希望もない、野暮、早漏、頻尿、肥満、男の更年期である。
これわぁ青春映画だぁ!
恥ずかしくてなぁぁにぃぃぐゎぁ悪い!
オトナの監督が撮った洗練された青春映画なら気持ちよく涙できるだろう。
20代の青春監督が撮った生生しく、キザで、冗長な映画は観ていられない。
しかし、どちらが本物の青春映画なのか。
オトナができるのは加工して、味付けして、切り取った「青春風映画」だ。
青春監督はゴツゴツした「本物の青春映画」しか撮れない。
それが特権だ。
工藤梨穂監督、私のようなエセ映画好きには周回遅れをくらわして、どうか映画を爆走してください。
監督の初期作にはすべてが込めれているんだから冗長で上等だ。
痛くて、ダサくて、恥ずかしい青春から逃げも隠れもしない工藤監督はとてつもないのかもしれない。
私も猛省し、正しいものは何なのか、それがこの胸にわかるまで、ボクは酒に飲まれて、少し心許しながら、この冷たい街の風にハゲ散らかし続けてこようと思います。
ー-
19歳だった。
渋谷パルコで「福本耕平かく走りき」と「薄れゆく記憶のなかで」というふたつの監督デビュー作が同時上映されていた。
観た後の帰り道、叫びたかった。
なんか悔しくて、たまらなく漲って、おそろしく焦って、叫んで駆け出して、オレも何か創りたかった。
19歳なんて自信があって、死にたくて、愛があって、孤独で、尾崎豊だ。
あの2本の映画はかけがえのないものだったけど世間からは消えた。
オトナが観たら恥ずかしいものだったのかもしれない。
でもこうして今も忘れない人間がいる。
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