映画館に帰ります。

暗がりで身を沈めてスクリーンを見つめること。何かを考えたり、何も考えなかったり、何かを思い出したり、途中でトイレに行ったり。現実を生きるために映画館はいつもミカタでいてくれます。作品内容の一部にふれることもあります。みなさんの映画を観たご感想も楽しみにしております。

映画「ハマのドン」 ただもの言うことが難しい国


□自分を大切にしすぎている

権力や組織に抗えるわけがない
そう思って生きている

しかし「ハマのドン」は
最高権力に異議申し立てをした

社会的に抹殺されるかもしれない
本当に殺されるかもしれない
惨めな人生になるのは必至だろう

でもそうだったとしてもドンに後悔などあろうか
そういうことが観ているうちにわかってきた

自分は少し自分を大切にしすぎて
いるのではないかと思った

それは結果として自分の本当に大切なものを
大切にしないという生き方になっている

映画を観ていてそう思った

□もの言えない空気

日本にカジノをつくる
これはアメリカと官邸が決めたことだ

カジノをつくれば1000億円規模の税収が
見込めると札束で市民や業者の頬を叩く

横浜は菅首相のお膝元
市長は19万人の反対署名を
無視してカジノを推進する

市長も役人も自分の意思など持てない
上意下達と諦めているのは市民も同じだ

しかし港湾のドンである藤木は違った
「港で博打はやらせない」

カジノは一瞬で破産を招き家族を不幸にする
子どもたちの未来にカジノはいらない

感動したのはドンが勝利したことではない
カジノがどうこうと言うことでもない

彼がもの言えない空気に勝ったことだ

敗北の可能性や結果の恐怖を顧みず
自分の意見を言った美しさだ



□例え受け取られなくても

ドン以外の人間模様にも見ごたえがあった

横浜市長の林文子は前の選挙で
「カジノは白紙」と言って当選した

しかし官邸の圧力で
カジノを横浜に誘致すると言わされた

しかし官邸は横浜でのカジノ推進の
旗色が悪くなると林を斬った

次の選挙で官邸は林を支援せず
国家公安委員会委員長の小此木を辞職させ
”カジノ中止”で出馬させて首長を獲りに行った

梯子を外され業者にだけ支援された林も
自民党の大応援を受けた小此木も落選した

一方でドンのもとには坊主頭の男が駆けつける

NYから来た村尾はカジノの設計者でありながら
カジノの弊害や搾取の仕組みを詳らかにした

なぜ彼は自分の仕事危うくしてまで
ノウハウを披露してドンを支援したのか

「人生において『これは自分がやれる』って
ときにはやらなきゃいけないんじゃないか」

市民たちは汗だくでカジノ反対のチラシを配る
受け取られなくてもやめない姿を観ていると
自分の中で何かがこみあげてくる


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