映画館に帰ります。

暗がりで身を沈めてスクリーンを見つめること。何かを考えたり、何も考えなかったり、何かを思い出したり、途中でトイレに行ったり。現実を生きるために映画館はいつもミカタでいてくれます。作品内容の一部にふれることもあります。みなさんの映画を観たご感想も楽しみにしております。

映画「AIR エア」 ソニーは30歩でNo way

□何もせずに金だけ儲けて女はタダ

不思議だ。

男たちが不可能を可能にしようとする痛快な作品。
楽しいのだが、同時に虚しい気分に覆われる。

同じような気分に囚われた方はいるのだろうか。

念のため2回観たが、やはり楽しさと虚しさを二つながら感じることは変わらなかった。

 何もせずに金だけ儲けて女はタダ
 何もせずに金だけ儲けて女はタダ

オープニング曲『Money For Nothing』は何を揶揄している。

ナイキのビジネスか、Mジョーダンか、アメリカ全体か。

□ドリームを見なければいけない国

腹の出たソニーマット・デイモン)は何を目指していたのだろう。 

彼はビデオアーカイブ室で有望選手を探す「バスケの師(グル)」。

たかがバッシュ。

Mジョーダンとの契約に成功すれば靴が売れ、NIKEと株主が喜ぶだろう。

失敗すればソニーの首が飛ぶ。 

でもジョーダンはアディダスを履いてシュートを決めるだけだ。

ソニーはラスベガスのカジノで負けた。

ビジネスだって同じこと。
成功と失敗のどちらの賽の目が出るかは自分の力だけではどうにもならない。

 靴も、契約金もどうでもいい
 アメリカは見たこともない君の成功に熱狂する
 そして絶頂に辿りついた君を奈落に落とすだろう

たかがビジネスであり、たかがシューズだ。
私たちはエアジョーダンが成功したことを知っている。

スクリーンを前にいささかクレイジーソニーの情熱を祝福する気持ちと、ビジネスに狂喜することのシラケた気持ちの両方を抱く。 

でもそんなこと言ってしまったらソニーたちはどうしたらいいのだ。

靴を売るというゲームに熱狂しなかったら、何に夢中になればいい。

アメリカという国はドリームを見なければ、一番を目指さなければ生きていけない。

それは果たして楽しいことなんだろうか。

□どこへ行くこともできない

この映画の主役は”1984年のアメリカ”だ。

時代とこの国の肌ざわりが見事に画面から伝わってくる。

シークエンスが変わるとき、この時代の数々のヒット曲がかかる。

そしてマット・デイモンが車を走らせる。

彼は何も言わなくていい。
彼は何もしなくていい。
エアジョーダンだってどうでもいい。

音楽がさらに高鳴る。

『Born in the U.S.A』だ。
シンディ・ローパーの『Time After Time』も。

本作で心つかまれるのは、場面と場面のあいだのこうしたシーン。

まぶしくて軽率なアメリカの空気。
華やかで虚しいアメリカの魂。
それを音楽とマット・デイモンの無言の横顔が伝える。

 どこへ行くこともできない
 アメリカで生まれた
 俺はアメリカで生まれた

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ご存じの方も多いと思いますがCEOのフィル・ナイトが書いた『SHOE DOG(シュー・ドッグ)』という本もすごくおもしろいです。

NIKEは日本のアシックス(オニツカタイガー)の代理店から出発した企業です。


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