映画「イチケイのカラス」 そんなの映画じゃねえ
□私は疲れていたんです
私は罪悪感いっぱいで劇場に向かった。
先日初対面の人に映画が好きですと伝えたところ
「私も好きです、昨日も行きました」と返ってきた。
なんてステキな出会いだと思い、何を観たか尋ねた。
「『イチケイのカラス』です」
…それ映画じゃねえし。
私の心は鉄のように冷え切った。
一緒にするんじゃねえ。
「一番好きな映画は何ですか」と映画ファンなら絶対聞かないマナー違反な質問に、お前金輪際映画好きとか言うんじゃねえぞとシャッターを下ろした。
そんな私が『イチケイのカラス』を予約してしまった。
疲れていたんです。
『イニシェリン島の精霊』、『別れる決心』、『エゴイスト』は2回見ました。
1回じゃ理解できませんよ、オレの頭じゃ。
『ベネデッタ』も、『逆転のトライアングル』も、『エンパイア・オブ・ライト』も正直難しかった。
『茶飲友達』も『「生きる」大川小学校津波裁判を闘った人たち』も『対峙』も重かった。
そして『エブリシング・エブリウェア・なんとかかんとかザンス』。
なんだよ、あれ。
大混乱しました。
途中で帰ろうか迷いました。
映画賞にノミネートされるような作品は私には難しいです。
ミニシアター系の作品は明確な答えをくれないからしんどいです。
私は疲れていたんです。
疲れ切っていたんです。
(『金八先生』荒谷二中校長のセリフより)
そして私は飛んだ。
テレビ局映画に逃げました。
しかも右派・保守寄りの産経グループはフジテレビですよ。
転向した政治家みたいな節操なしです。
これからは、今井は今井でも今井瑠々って呼んでください。
なんなら今井メロでもいいです。
□映画ファンは「踊る~」を許せない
汚れつちまった映画ファン
今日も小雪の降りかかる
こうなりゃひとり殺るもふたり殺るも一緒だ。
ポップコーン食ってやりましたよ。
ビールも飲んでやりましたよ。
どうだ、まいったか。
もはや映画ファンじゃないだろ。
ただの映画見に来た人だろ。
ははん、もうどうなってもいいんだ。
ぬぁぁにがカンヌだ、ぬぁぁにがメタファーだ、ぬぁぁにが被写界深度だ。
こっちはなあ、西野七瀬とか田中みな実とか見放題なんだぞ。
映画ファンはシャーロット・ランプリングと寺島しのぶでもありがたがってろ。
ふ~🫠(賢者)
まあボクもそうなんですが、映画ファンは許せないわけなんですよね。
歴代興行収入の実写邦画1位が「踊る大捜査線」であることが。
それがどれだけ映画ファンと映画関係者を傷つけているか。
□テレビ局映画の矜持
けれど『イチケイのカラス』楽しかったですよ。
オールスター戦でも観てるみたいだった。
人間の複雑さを体現できる俳優は、戯画化したキャラをやらせても絶品でした。
テレビ局の映画というものにも思いを馳せました。
彼らにはきっと強烈な反骨精神があるだろう。
映画賞や映画批評からも無視されている。
けれど誰の映画がもっとも客を入れているか。
やりたいことをやるのではなく、誰にでもわかるものをつくらねばいう制約。
許認可事業であることやスポンサーの存在も足枷になっているだろう。
それから視聴率や興行収入といった数字を取ることは至上命令だ。
客入りはイマイチだけど芸術的価値があるでは許されない。
彼らはそういう制約だらけの、作家主義の対岸で、絶対におもしろいと言わせてやるんだと闘っている。
そんなの映画じゃねえとか、金かけられるくせにとか罵られても。
そして実写邦画1位に「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」が君臨しているのだ。
本作は、自衛隊の海難事故や政府による情報隠蔽、企業による土壌汚染など権力サイドが眉を顰めるような題材も果敢に扱っていた。
テレビ局映画がどこまでえぐれるかについては限界はあったが、彼らの矜持は感じることできた。
紅勝て、白勝て、どっちも勝て。
テレビも、映画も、どっちも勝て!
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