映画館に帰ります。

暗がりで身を沈めてスクリーンを見つめること。何かを考えたり、何も考えなかったり、何かを思い出したり、途中でトイレに行ったり。現実を生きるために映画館はいつもミカタでいてくれます。作品内容の一部にふれることもあります。みなさんの映画を観たご感想も楽しみにしております。

映画「歓待」 もっと余白をわかりたいのにNTR系

深田晃司監督の「LOVE LIFE」があまりに素晴らしかった中、市の映像ホールで同監督の2011年「歓待」が公開されていた。監督の源流を観たくて足を運ぶ。そして返り討ちに合う。

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第23回東京国際映画祭日本映画・ある視点部門作品賞受賞作。下町のとある家族が、不穏なちん入者の出現によってそれまでの一見「平和」な日常をかき乱されていくさまを、風刺を盛り込みつつ予測不能の語り口でコミカルに綴る。
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やけに若くて妙に美人ちゃんの後妻。
風体が冴えず何でもなあなあの夫。
そこにズケズケ侵入してくる謎の古館寛治。

ストーリーとしては最終的に古館寛治が遂には外国人や無宿人を40人くらい家に住まわせてしまうというエクストリームを巻き起こす。

しかし「静かな演劇」で演劇に革新を起こした劇団青年団の演出部でもある深田監督であるから、なぜそういうことが起きているかの説明はないし、人物たちが発する言葉に本音は見えない。全編において不穏で不気味で苦笑な空気が張り巡らされる。

すなわち「余白」に溢れた世界である。観客は与えれた情報やセリフの間や人物たちの関係性をもとに「自分なりの答えを感じる」映画である。

素敵な知的ゲームであるが、なかなかいやらしくて意地悪な作り手とも言える。作り手として意固地な自分を持っていないと創れるものではない。匙加減が過ぎると「不条理劇」になってしまう。別役実ベケットみたいな。そしてある観客は「わからねーよ、こんなの」って実は心で思いつつ、えすえぬえすでは「見る人を選ぶ作品です」とか意味不明のことを書く。「個人的にはちょっと…」とか、あんた個人じゃないときあるんかい。

かくいう自分はまんまと「宙ぶらりん」の状態で96分吊るされっぱなしだった。

夫婦という他人、共同体の包摂と排除、関係性の解体と再発見。そういうテーマを自分なりに深堀りしていければよかったのだろうが。

この要素でみせられたら皆さん何を想像します?

・唇プルプル家庭なじめず薄幸美人若妻スレンダー
・非イケメン非リッチ非主体性の子連れダンナ
・髭面言葉巧みグイグイ同居テストステロン古館寛治

これAVでしょ。これどう考えてもAVの早送りするドラマパートでしょ。「寝取られ系AV」を見せられてる気分で、いつ奥さんが古館寛治に襲われちゃうのか心配で心配で落ち着かなかったのです。やめろー古舘!逃げろー美人ちゃん!邪魔だーメガネの旦那!行くなー行けー行くなー古舘!

小津安二郎、成瀬己喜男、エリック・ロメール

「余白」から感じることができるのは映画の最大の喜びだが、自分の中の静かな感性を磨いておかないとポカンとするか、寝るか、AVみたいだぁとなってしまう。

比べると「LOVE LIFE」はずいぶんと深田晃司監督がソフィスティケートに仕上げたんだなと思う。絶賛上映中。

映画はショットの積み重ねを通じて真実を描こうとするものですが、AVは体位を重ねてファンタジーを描いております。よい子はマネしません。

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