映画「手」 本当は森さんがおじさんになるとこ見られないと思ってたでしょ?
客席で「名人かよ」とつぶやき、息を吐いた。
エンドロール、曲は「スロウタイム」。
ラストシークエンス。
これまで無反応だった父(金田明夫)が初めて長女を名前で呼ぶ。
「さわちゃん」
カットバックでさわ子(福永朱梨)が大きく映る。父の呼びかけに照れながら、戸惑いながら、涙するさわ子。
ミドルショットやロングでキャメラはさわ子を映すことが多かった。肩入れし過ぎず、突き放しもしない。そのくらいの”常温”な位置からさわ子の孤独を捉えてきた。
それがラスト。
クローズアップのカットバック一発。
さわ子の孤独の一部が氷解する音が客席にも聞こえた。
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松居大悟監督が山崎ナオコーラの原作小説を、落ち着き払った映像運びで映画化。
恋をしてもセックスをしても、どこかで”終わり”を感じているような25歳の主人公さわ子を追う。
彼女への距離感が、この映画を優しく寂しい色調にしている。まるで夕景のような滋味に「名匠の映画を観ているんだっけ」と錯覚する。
同僚の森(金子大地)が「今からさわ子さんにキスしようと考えています」と言うと、さわ子は「いいと思います」とふわりと答える。躊躇しながら森が唇を近づけてくると、さわ子がなんとなく最後に自ら唇を重ねる。
そんなふうにさわ子は、幸せを必死に求めるほど愚かでもないが、人のぬくもりを諦められるほど絶望もできていない。瞳は何も期待していない。
そしてキスするふたりの前を早朝のランナーが駆けていく。ふたりは身を離す。ふたりはあくまで景色の中にいるんだと、この映画は常温で人物たちを描く。
さわ子はどこにいくのだろう。
どこにも辿りつかないのが正解というか、答えなのかもしれない。
しかしラストで父との確執がほどけたとき、それはたったひとつのことではあるが、多くを期待しない彼女によかったねと心から思った。
♪これから歳をとってゆくでしょう
夢になってゆくでしょう
忘れていた口癖と
雨上がりに待ち合わせ
スロウタイム
山崎”オナコーラ”だとずっと思ってた。
名前見るたびムラムラしてた。
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