映画「サバカン」 ここでお別れしたくない、またねって言いたい映画
主人公少年を助ける由香(茅島みずき)というおねえさんが登場する。脇を固めるひとりで出番は多くなく、素性の説明もない。
彼女が海辺で、朝鮮半島から流れてきたであろうサイダー缶を拾いあげ、韓国に行ったことはないと小さく呟く。そして海の向こうをキャメラはとらえる。
本筋とは関係のない場面だが、由香は”在日”で、きっと語られない思いや苦労があることがわかる。
いや、もしかしたら私の勝手な解釈なのかもしれない。それでもいい。観客の私には完璧にそう”わかった”のだ。
そのとき私はなんというか監督としっかり握手をした。「見事だ、あなたは」と。
そもそも冒頭から信頼できるなと思った。いつだって映画は冒頭が大切だ。
80年代、田舎の裕福ではない家の小学生。
アディダスでもプーマでもない、なんだかわからない靴。ノンブランドのハイソックス。ズボンは短パンで、ぼやけた水色で、ピチピチ気味。
「そうだよ、それだよ」とニヤリとする。
画面の色調もコントラストのくっきりとしたもので、おしゃれな微妙さがない。「これこそオレのよく知る80年代の色だ」と思わせてくれた。
映画冒頭の演出で観客との信頼関係は決まる。
あまりにリアリティに欠けると、観客としては「随分なめられてるな」と感じてしまい、映画世界と仲良くなれない。
逆の場合は、その映画と友だちになれる。その後の展開でいくらかフィクショナルがあっても、なんとかついていきたいと思うものだ。だって友だちだから。
草彅剛、尾野真千子、竹原ピストル、岩松了、貫地谷しおりなどのステキさについては、多くの方が言及していることにまったく異議はない。
夏の光に煌めく海の水面のように、水平線に沈む燃える夕陽のように、美しい映画だった。
ここでお別れしたくない。「またね」って言いたい映画だった。
おっぱいは見るよねぇ♪大小問わず。
(小希望)
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