小説「慟哭 小説・林郁夫裁判」 そして映画「すばらしき世界」
オウム事件を追った「慟哭 小説・林郁夫裁判」を読みながら、こういう事件はきっとまた起こるだろうと確信に近い感覚に襲われた。
それは自分自身がある部分でこの事件を起こした人たちを「わかる」と思うからであり、この事件を起こした人たちがちっとも異常ではなく、オレからしたら「比較的いい方の人間たち」だと思うからだ。
この残酷な世界を何とかしたいという向上心を人間が持つ限り、こうした事件は起きてしまうのではないか。人間がすべてを諦めることができるなら別だが、世の悲しみや理不尽を何とかしたいという優しい気持ちがある限り。
作者の佐木隆三はあとがきでこう記している。現世を捨てて、「人類の救済」を夢見た若者への言葉だ。
『なによりも訴えたいのは、「この世はつまらないちっぽけなものではない」と、若者たちに知ってもらいたい。老境に達して、ようやく人間社会の素晴らしさに気づいた者として、強く訴えずにはいられないのである。』
西川美和監督は同じく佐木隆三の作品「身分帳」を映画化するにあたり、そのタイトルを「すばらしき世界」とした。
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