映画館に帰ります。

暗がりで身を沈めてスクリーンを見つめること。何かを考えたり、何も考えなかったり、何かを思い出したり、途中でトイレに行ったり。現実を生きるために映画館はいつもミカタでいてくれます。作品内容の一部にふれることもあります。みなさんの映画を観たご感想も楽しみにしております。

映画「ロスト・イン・トランスレーション」 寄る辺なき存在とわかるまで


□『ロスト・イン・トランスレーション』⁡

2003年公開作品。
脚本・監督はソフィア・コッポラ

ソフィア・コッポラユニクロのコラボTシャツ販売を記念しての再上映。

アカデミー賞主要4部門にノミネートされ、脚本賞を受賞。

全編東京を舞台としているが、監督自身が日本に長期滞在していた時期がある。

渋谷のスクランブル交差点が世界に知られるきっかけになったと言われる。

タイトルは「翻訳において失われる」が直訳だが、「言葉にできない」とか「わかり合えない」といったニュアンスをふくんでいるのか。

出演
 ビル・マーレイ
 スカーレット・ヨハンソン


□Tokyoを浮遊するふたつの魂

ボブ(ビル・マーレイ)は、サントリーウィスキーのCM撮影のため来日する。

異国で言葉が通じない疎外感に苛まれるが、かといって妻に電話してももはや心通う関係ではない。

同じホテルに滞在しているシャーロット(スカーレット・ヨハンソン)は、夫の仕事に同行してきたが時間をもて余して虚しい。

東京のネオンの中で自分が異邦人に思えてくる。

□われわれが知らない東京

親子ほども歳の違うふたりは、異国でなければ出会うことはなかっただろう。

孤独は自意識を覚醒させる。

ボブは残りの人生が空疎なままでいいのかと焦り、
シャーロットは今が無為に過ぎることを焦る。

過ごしてきた時間にため息をつく老いた男
これからの時間に何があるのか憂う若い女

ふたりは街に出る。

スクリーンに映るTokyoは猥雑で騒々しい。

われわれはこの街を知っているはずなのに、まるで知らない街に見える。

Tokyoを漂流するふたつの魂。

時として人は旅に出て、自意識を苛め抜く。

この地球上で自分が寄る辺ない寂しい存在だと痛感するまで踊る。

街は輝き、人だけが沈んでいく。

虚しさの底に到達し、自分を諦めきったとき、ようやく自分に帰ることができるのだ。


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