映画館に帰ります。

暗がりで身を沈めてスクリーンを見つめること。何かを考えたり、何も考えなかったり、何かを思い出したり、途中でトイレに行ったり。現実を生きるために映画館はいつもミカタでいてくれます。作品内容の一部にふれることもあります。みなさんの映画を観たご感想も楽しみにしております。

映画『ひまわり 50周年HDレストア版』 毒々しくひまわりが咲き誇る反戦映画であってほしくない

『ひまわり』は1970年のドラマ映画

 若く陽気なバカップルだった
アントニオとジョバンナは引き裂かれ
やがてふたりは白髪と皴の中年になった。

本当に愛する人とは結ばれない。

誰でもそうなのではないか。
だからみなこの映画に涙する。

いや、結ばれないからこそ
「本当に愛する人」と思い続けるのだ。

手に入らないからこそ「愛」というものが
あるのではと憧憬の念を抱くのだ。

戦争などなくても天災や出自の違いで
はたまた互いの優しさや残酷さが原因で
結局恋人たちは引き裂かれるのだ。

そしていつまでもあの人こそは
「本当に愛する人」と思い続けるのだ。

名作「ひまわり」は
ヘンリーマシー二の煽情的な音楽が
響き渡る『メロドラマ』の金字塔だ。

瑞々しいソフィアローレンと
マルチェロマストロヤンによる
恋愛劇であってほしい。

すっかり禿げ上がったおっさんが
すっかり所帯じみたおばさんが
「本当に愛する人」と結ばれた方の
人生を夢想する映画なのだ。

兵士の亡骸が眠るウクライナの大地に
毒々しくひまわりが咲き誇る
反戦映画』であってほしくない。

ひまわりはロシアの国花
そしてウクライナの国花。

 

映画『ひまわり 50周年HDレストア版』公式サイト