映画「劇場版 荒野に希望の灯をともす」 裏切り返さないことが平和
白衣を脱いでショベルカーに乗り、アフガニスタンに水路と小麦をつくった中村医師。
彼が死んだとき、日本の為政者は「テロを断じて許すことはできない」と言った。
中村医師なら"許す"と言ったと思う。
氏は暴力の上塗りを拒否し、大義があっても戦闘に与しなかった。
平和は戦争よりもどかしく、死も頻発し、裏切られても裏切りかえさない不条理な精神を要する。
『信頼は一朝にして築かれるものではない。利害を超え、忍耐を重ね、裏切られても裏切り返さない誠実さこそが、人々の心に触れるのである。それは、武力以上に強固な安全を提供してくれ、人々を動かすことができる。私たちにとって、平和とは理念ではなく現実なのである』
中村医師は”許す”と言ったろう。そうでなければ氏の人生と辻褄が合わない。そうイメージしなければ氏にあまりに失礼だ。
銃と核で解決する。
それもいいかもしれない。
平和はナイーヴな作業ではないと中村医師はその人生で見せてくれた。
平和もその過程でたくさんの人が死に、うんと時間がかかり、裏切り返さないという鬼神の精神性が求められる。
戦争で殺されるのも、平和を築こうとして殺されるのもどちらも同じ死だ。
好きな方でアプローチすればいい。
『彼らは殺すために空を飛び、我々は生きるために地面を掘る。彼らはいかめしい重装備、我々は埃だらけのシャツ一枚だ。彼らは死を恐れ、我々は与えられた生に感謝する。同じヒトでありながら、この断絶は何であろう。彼らに分からぬ幸せと喜びが、地上にはある。乾いた大地で水を得て、狂喜する者の気持ちを我々は知っている。』
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