映画館に帰ります。

暗がりで身を沈めてスクリーンを見つめること。何かを考えたり、何も考えなかったり、何かを思い出したり、途中でトイレに行ったり。現実を生きるために映画館はいつもミカタでいてくれます。作品内容の一部にふれることもあります。みなさんの映画を観たご感想も楽しみにしております。

映画「愛する人に伝える言葉」 観客である私も死んだ


主人公バンジャマンと一緒に死ぬことができる映画だ。

死ぬことは怖かった。

なにも成し遂げていないのに死ぬと思ったらとても哀しかった。

オレは演劇教師なのだが、生徒の肌と肌が重なるところが愛そのものに輝いて見えた。

もっと演技レッスンがしたくなった。

うまい演技なんかするな、おそれず自分を解放しろ。

ドクターと看護師が歌っていたよ。

楽器を鳴らし、手を叩き、笑顔でね。

それは希望なのか。

わからないけど”ああ人間だ”と久しぶりに思った。

看護師に恋をした。

指輪をしてたけど。

母さんの顔をたくさん見た。

ぜんぜん優しくできなかった。

息子を認知しなかったことを心底後悔して死ぬことになった。

オレは本当になんだったんだろう。

オレが死ぬとき、親愛なるドクターと親愛なる看護師は非番だった。

だから前の日にさよならした。

大好きな看護師が病室を出て行った。

次の日、母さんが席を立ったときに死んだ。

許して、許すよ、ありがとう、愛してる、さようなら。

観客である私も死んだ。

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