映画「この世界の片隅に」 狂気の世界は少女の”まっとう”ひとつ奪えなかった
主人公すずの生々しい”業”と”怒り”が作品に通奏低音として流れ続ける。
一見素朴を装っている作品だが、人間の生理から目をそらしていないし、世界や戦争の愚かさをギミック総動員して暴いている。
激しい作品だと思う。
それは片渕監督の青い炎のような激しさだと思う。
すずさんは”まっとう”な人間として生き続けた。
一方で世界は戦争という狂気を吹き荒らして人間をなぎ倒していた。
”少女のまっとうさ”と世界の狂気”
世界は彼女から
はるみさんを奪い
母を奪い
父を奪い
妹を奪い
初恋の人を奪い
リンとの邂逅を奪い
そして絵を描く右腕を奪った。
しかしすずさんは失った右腕で小さな命を持って帰ってきた。
彼女は焼け野原に”まっとう”なままで垂直に屹立していた。
狂気の世界は、少女の”まっとう”ひとつ奪えなかった。
世界の狂気は、少女ひとり倒せなかった。
情けない、くだらない、ざまあみろ。
2016年公開当時に劇場で3度鑑賞させてもらったが、
今回はいつもと違うハコで鑑賞させてもらった。
すずさんの強さと弱さに、また叩きのめされた。
いま、”あんたファミリーじゃないのに「ファミリー映画会」観ていいの!”って突っこんだ人、叩きのめすよ(泣)
#のん
#能年玲奈