映画館に帰ります。

暗がりで身を沈めてスクリーンを見つめること。何かを考えたり、何も考えなかったり、何かを思い出したり、途中でトイレに行ったり。現実を生きるために映画館はいつもミカタでいてくれます。作品内容の一部にふれることもあります。みなさんの映画を観たご感想も楽しみにしております。

映画「瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと」 きのう何肉食べた? 宇宙になってしまった日本が誇るアウトロー

こんにちは。

今日はドキュメンタリー映画の「瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと」です。

尼さんと言ったら瀬戸内寂聴と100人中100人が答えるのではないでしょうか。

尼さん業界では、圧倒的カルテル状態だった寂聴先生。

劇場は自分以外すべて女性でした。尼さん予備軍がいっぱい。

ではいってみましょう!

 

寂聴先生食べてばっかり

何かと息苦しいこの国で、『自由に生きていいんだよ、罪深くていいんだよ』と自分の人生を切り売りしながら教えてくれた寂聴先生がいなくなった。

つまらないことです。

この映画は寂聴先生の最後の数年を中心に、監督に心許してリラックスした姿が残されています。

というか基本的には寂聴先生が食べてばっかりの映画です。

しかもこの女坊主、主に肉と魚をガンガン食らっております。

秘書から差し出された寿司桶から『中トロとウニ軍艦といくら軍艦がいいな』と甘えた声でおねだりし、でかいステーキを『うまいうまい』と監督と一緒に平らげ、すげー霜降り肉のすき焼きをペロリして、『ああん、もうおなかいっぱい』と言って煮物には一切手をつけず、そう言いながらとんかつに手を伸ばすんです。

 

映画を観ながらつぶやきました、「まだ食うんかい、ばあさん」

 

あと、ビールとか、シャンパをいつも飲んでます。

徐々に体調がすぐれない日も増えてきますが、久々に外出となったらすっぽん料理屋をリクエストです。

こっちの腹がえらく減ってくる映画です。

寂聴版「きのう何食べた?」です。

正確には、寂聴版「きのう何肉食べた?」です。

確認ですが、この肉食獣は一応坊主です、ぱはっぷす。

いや実はただスキンヘッドなだけなのでしょうか。

ただの坊主コスプレの老婆なのでしょうか。

あとですね、寂庵(じゃくあん)という住処にはいつも寂聴ガールズみたいな秘書が3人くらいいます。

やけにかわいいコまでいて、映画観てても気が散ります。そりゃあ99歳のスキンよりカワイ子ちゃんに目が行きます。

で、このガールズほとんど台所に立ちっぱなしでこの大食い怪獣にいつもなんかしら作ってます。

それにしても、尼さんに秘書軍団って...。

日本の誇るアウトロー

そもそもこの大食い、若い時は夫と子どもを残して家出をし、不倫もし、ドロドロの三角関係もし、それを私小説に書いてバンバン売っていた流行作家でした。

そして51歳で突然出家して世間を驚かせたのが、瀬戸内寂聴こと瀬戸内晴美容疑者です。

容疑者でいいですよね。

現在の日本の法制度で裁けないだけで、「業」に関してはかなりの常習犯です。

愛、恋愛、性愛という業について、容疑者は以下のように供述しています。

 

『恋愛は雷に打たれるようなものだから、どうしようもないし、逃れられないの。

 でも恋愛はしないよりした方がいい。恋愛は人間を成長させる。

 本なんかじゃなくて、恋愛が成長させるの』

 

反省なし、情状酌量の余地なし、執行猶予なしでいいと思います!

寂聴容疑者がスキンヘッド差し出したくらいじゃ仏さんもゆるさないでしょう、なんせ肉食ってますしね。

やはり尼さんというよりは希代のアウトローといった感じですね。

でもこういう人の存在が必要なのです。

『なんとかなるわよ、だってわたしどうにかなってるし、それにどうせみんな最後は死ぬんだから』とガハガハ笑っているのを見るとホッとするのです。

だってこのスキンヘッドのお方は自らの業深き体験でそれを証明しているからです。

そうすると自分も、じゃあもう一日だけ生きてみるか、という気持ちになります。

いけ好かない国だけどもう少しいい加減に暮らしてみようか、という気持ちになります。

自分の生をシリアスにし過ぎないために、寂聴先生のようなアウトローな生き方が自分の心を融解させるのに役立つことがあるんです。

 

宇宙になっちゃった

あと反戦、反権力、反原発というところもさすがわかってるなぁスキンヘッド!という感じです。

『晩節なんて汚して上等』と、反原発集会に出たり、新聞に反戦広告を出したりします。

『書く気力がなくなった、生きてても楽しくない、心中しよう』と本作の監督を誘惑します💛

 

はい、みなさんと同じように私もこう思ってます。

「ねぇ、ジャクちゃん、キミちっとも解脱してないだろ、どっちかっていうと涅槃で待つのタイプだよね」と。

 

晩年も執筆連載も続けていましたが、だんだん朦朧としてきているようで原稿用紙8枚書かなきゃいけないところ4枚しか書かなくて、60歳以上年下のかわいい秘書に「部屋に戻ってあと4枚!」と言われて、『じゃあ、がんばるからアイスちょうだい』テヘペロしてました。

99歳でオンライン会議がうまくできなくてテーブルに突っ伏して泣いていました。

『あたし出家して肉も酒もやめてないけどセックスだけはしてないよ』とドヤ顔してました。

 

うーん、死んじゃったのか。

 

ねえ先生、こっちがあんまりつまらないことばかりだと、寂聴先生はじめ、そっちの方がメンツも充実してて楽しそうだと思ってしまうじゃないですか。

最後までかわいいひとでした。

なんか死んで宇宙になっちゃったような感じです。

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