映画「愛なのに」 ちょっとかわいく、とても滑稽で、かなりクズ
今をときめく#河合優美 演じる女子高生の岬が、古本屋店主の多田( #瀬戸康史 )にいきなり「結婚してください」と迫る。
唐突でとぼけたセリフに、「おお、おかしいかわいいラブストーリーがはじまるか」と思いきや。
多田の憧れの女性である一花、その婚約者である亮介、ふたりのウェディングプランナーの美樹も絡んできて、物理的に実際的に絡み合っちゃう濡れ場もいっぱい。
老若男女の映画館は、テレビで不意にハダカが映ったときの気まずいお茶の間のようになる(笑)
愛、片思い、結婚、セックス。
どうしていいのかと迷える子羊たちの日々。
彼ら子羊が、柵に囲われたようなせまい行動範囲のなかで右往左往する。
その姿はちょっとかわいく、とても滑稽で、かなりクズである。
その様子の描き方は、さすが #城定秀夫・ #今泉力哉 コンビ、劇場からは笑い声があがる。
自分も笑う。
笑うが、笑ったあとに反動がくる。
「おい、オレはひとのこと笑えるかよ」
愛がなく、片思いができず、結婚がわからず、
セックスに苦しんでるのは、そう私です。
彼らは大きく欠落していて、それぞれ愛に関していちばん希求しているものを手にできないでいる。
恋をして愛することは素敵なことと語られるけれど、この映画では「ブザマでキモチワルイものでもある」と提示する。
その視点がとてもいいところで、この作品を信用するところだ。
ブザマでキモチワルイをさらし右往左往するが、結局は誰も初手のところから動けていないで帰結する。
彼らはなにも解決できなかったし、どこにも進めていないように思える。
けれどこの愛しい人物たちと2時間過ごしてきて、それこそが我々のこの世界だよねと思う。
「愛なんてそんなものだよね、どうにもならないよね」とメェーメェーと言いながら、肩を組んで健闘を称え合いたい。
そんな気分で同じく迷える子羊である私は、劇場をあとにした。
#愛なのに